HoloLensのホログラム共有(Shared holographic experiences)ドキュメントの日本語訳
前回の座標系システムのドキュメントに続けて、MicrosoftのHolographicサイト上にあるShared holographic experiences(ホログラムを共有する) のドキュメントを自分の勉強のために翻訳しました。
- 元のドキュメントはこちらです。 https://developer.microsoft.com/en-us/windows/mixed-reality/shared_holographic_experiences
目次
ホログラムを共有体験
- ホログラム共有体験とは何か?
- ホログラム共有体験のシナリオ設計
- 2.1. どうやって共有するのか?
- 2.2. 人数はどれくらい?
- 2.3. メンバーはどこにいる?
- 2.4. いつメンバーはホログラムを共有する?
- 2.5. 環境がどれくらい似ているか?
- 2.6. どんなデバイスを使っている?
- チェック項目をシナリオに適用してみる
- 空間アンカーの共有
- 関連ドキュメント
Shared holographic experiences(ホログラムを共有する)
ホログラムは一人で見るだけではありません。アプリケーションは1台のHoloLensから他のHololensに空間アンカーを共有する事で複数台のデバイスに対して実世界の同じ位置にホログラムを表示する事ができます。
1.What are shared holographic experiences? (ホログラム共有体験とは何か?)
ホログラム共有体験を設計するには、開発者は「体験の対象となるべき人」に関して考える必要があります。 また、その人々が良い体験をするための「環境」と、その人々が目にする「オブジェクト」についても同様です。 ホログラム共有体験に関して考えるときはこれら(人・環境・オブジェクト)に関して、頭の中で意識しておくようにしましょう。
ホログラム共有体験とは「"二人かそれ以上の人々"が"同じホログラムのオブジェクト"を体験するという事である。それは"同じ場所でも離れた場所でも"行う事ができる。」 ということなのです。
2.Defining your shared holographic experience scenario(ホログラム共有体験のシナリオ設計)
以下のような簡単なチェック項目を利用して、あなたのホログラム共有体験のシナリオを明確にしましょう。
- どうやって共有するのか?
- 人数はどれくらい?
- メンバーはどこにいる?
- いつメンバーはホログラムを共有する?
- 環境がどれくらい似ているか?
- どんなデバイスを使っている?
2.1 How are they sharing? (どうやって共有するのか?)
ホログラム共有はいろいろな方法を使う事ができるので一緒に学んでいきましょう。
話がぶれないように、ホログラム共有が行われる方法を以下のカテゴリーに分類してみましょう。
「プレゼンテーション」
- 複数の人に対して同じコンテンツを表示するケースです。
- 例えば、大学の教授が講義において同じホログラムを複数の学生たちに同時に見せます。ただし、教授にだけは、講義メモやヒントが見えているということもできます。
「コラボレーション」
- 同じ目標を達成するために複数人で一緒に協業するようなケースです。
- 例えば、教授が心臓手術の方法を学ぶための課題を出します。医学生たちは共有されたホログラムの心臓のモデルに対してペアで協業することで、手術の技術を学ぶ事ができます。
「ガイダンス」
- 課題を解決しようとしている人を、別の人が一対一の関係でサポートするような場合です。
- 例えば、教授がホログラム共有を活用して心臓手術の訓練を行っている学生に対してアドバイスを行うなどの場合です。
この考え方は以下のような事に影響を与えるために重要です。
- 利用者はどのようにコンテンツを利用(体験)するのか?
- オブジェクトを操作する必要はあるのか?
- 環境要因を考慮する必要はあるのか?
2.2 What is the group size? (人数はどれくらい?)
以下のような考え方で、あなたの共有体験のあり方を分類してください。
- 1対1
- 少人数(7人未満)
- 大人数(7人以上)
この分類はマイクロソフトでの経験上を元におすすめするものです。 グループの大きさは以下のような事を考慮する上で重要な影響を与えます。
- ホログラムが表示される空間にいる人数
- オブジェクトの大きさ
- 環境(空間)のサイズ
2.3 Where is everyone located? (メンバーはどこにいる?)
以下の分類は、どこにいるのか?を考えるのに役立ちます。
- 同じ場所:全ての利用者が同じ空間に一緒にいる
- 遠隔地:利用者は物理的に離れた場所にいる
- 両方:一緒にいる人と離れている人が混在している。
これらの事が大事なのは以下の事に影響するからです。
- どうやってコミュニケーションをとるのか?
- 例:それぞれのアバターを使うべきかどうか?
- 何を見せるのか?全てのオブジェクトを共有する必要があるのか?
- それぞれの環境にあわせる必要があるのか?
2.4 When are they sharing? (いつ共有するのか?)
「いつ」共有するかは、アプリのシナリオを設計への重要な問いかけです。
[同時刻] 同じ時刻にリアルタイムにホログラムを共有する 例:二人の生徒が同時に実習をする
[非同期]・異なる時間にホログラムを体験する 例:二人の生徒が異なる時間の異なる時間割で実習を行う場合
[両方]同時に利用する事もあれば、別の時間の場合もある 例:教授が学生の実習を後から採点し、明日の実習のためにメモを残す場合
これらの事が大事なのは以下の理由からです。
- オブジェクトと環境の持続性
- 例えば、後から確認ができるように、状態を保存しておく
- ユーザーの視線
- 例:メモを取るための、利用者がどこを見ていたかなどを思い出す必要があるかもしれません。
2.5 How similar are their physical environments?(環境がどれくらい似ているか?)
ホログラム共有を利用する人が、同じ場所にいない場合、体験内容が異なってしまうかもしれません。
[似たような環境の場合] 同じような部屋のサイズ、家具の配置、環境光や環境音である場合。 例:教授が教室Aにいて、学生たちは教室Bにいるようなケース。教室AはBよりも椅子が少ないが、両方とも同じようなホログラムを配置できる机があるなど。
[異なる環境] 部屋の大きさも家具の配置も環境光も違う場合。 例:教授はフォーカスルーム(集中するための狭い部屋)にいて、学生たちは先生と生徒でいっぱいの広い講堂にいるようなケース
これらの事が大事なのは以下の理由からです
ホログラム体験がどのように行われるか?
- 例えば、机の上に配置するのが最適なのに、利用者の環境に机が無い場合や、広いスペースが必要なのに、利用者はごちゃごちゃした環境にいる場合。
オブジェクトのサイズ
- 例えば、等身大の人物を机の上に配置するのは大変かもしれませんが、心臓の3Dモデルを配置するのは難しく無いでしょう。
2.6 What devices are they using?(どんなデバイスを利用しているか?)
ホログラム共有体験に参加している人が異なるデバイスを使っている場合。
- 3Dデバイス(Mixed-Reality/HoloLens)
- 3D(Virtual Reality/VRデバイス)
- 3Dもしくは2D(MR/VR/それにスマートフォンやPCの画面など)
3.Applying the questions to define a shared holographic experience scenario(チェック項目をシナリオに適用してみる)
これらの問いかけを利用して、Holographic AcademyのHolograms 240: Shared hologramsのプロジェクトのシナリオを定義してみると
同じ場所にいる、少人数のグループが同時にエネルギーハブを操作します。 全ての人は同じ環境にいて、3DのMRデバイス(HoloLens)を利用します。
ということができます。
4.Sharing spatial anchors (空間アンカーの共有)
ホログラム共有体験で重要なことは複数のユーザーが同じホログラムをそれぞれのデバイスで利用することです。
空間アンカーを共有するための一つの方法は以下のようになります。
まずユーザーがホログラムを配置します。
アプリケーションが実世界の正確な場所にホログラムを配置するために空間アンカーを生成します。
空間アンカーと配置を補助するセンサートラッキング情報を、他のHololensへネットワークを経由して送信(export)します。
空間アンカーとセンサートラッキング情報を別の利用者のHololensにてインポートします。
共有された空間アンカーを利用することで、アプリケーションは両方のデバイスでコンテンツを配置するための共通の座標系を持つことができるようになります。 そして、アプリは同じ位置と向きにホログラムを配置することができるようになります。
5.See also(関連ドキュメント)
- 以下のビデオがこのドキュメントで説明しているHoloLensを利用した医学生の教育の内容の元ネタになっていると思います。見てみると理解が深まるかもしれません。
翻訳に際して
- 原文になかった文章をわかりやすくするための独自の補足追加は()内に記載しています。
- 各章の見出しに関しては原文を表示し、その後ろに()で訳文を記載しています。
- 個人的に重要と思う要素は流し読みできるように太字にしています。原文はboldになっていません。
- コーディング時にも利用しそうな重要な用語に関しては、原文のまま書いたり、以下のような翻訳を行っています。
- 内容はたまに修正する事があるかもしれません。