IoT/NUIメディア発展の歴史的文脈について
最近、IoT(Internet of Things)やNUI(Natural User Interface)関連技術が急速に発達してエンジニアとして、生活者としても、とても身近になってきてます。
以前は高価で、研究施設や産業界でしか利用されなかった各種センサーなどハードウェアやソフトウェアが安価(もしくは無料)で手に入れることができ、またそれを利用することも容易です。このブログに来ていただいた方々は十分実感いただいているのではないでしょうか?
そのことは、このブログを書き始めたきっかけでもあるので、今回はそのことを書こうと思います。
もちろん、IoT/NUI関連の技術は突然発生したわけではなく、その下地となるテクノロジーの進化が脈々と続いていたのですが、Iot/NUI周辺の変化・表出は特にこの1,2年程度で急激にはじまったと感じています。
その要因の一つとしては、2008年に登場したiPhoneを起点としたスマートフォンの進化とその普及が大きく関わっていると考えています。
スマートフォンの進化と普及
その特性からIoT/NUIデバイスはサイズ・コスト・電力の制約のために、それ自体は人間に情報を伝達するためのインターフェースを持ち合わせていません。一方、人間に情報を伝達するインターフェースであることに特化した形状であるスマートフォンはそのメッセージの送り先として必要な機能を持ち合わせています。 また、そのスマートフォンは「世界中で歯ブラシより普及している」と言われる程、多くの人にとって身近で手放せない存在になっています。
このスマートフォンの存在なくして、IoT/NUIデバイスが広く普及することはできません。
そして、このスマートフォンが次のトレンドを生み出しました。
ビジネス面におけるトレンド
そして現在、スマートフォンは少なくとも先進国においては普及期を通り過ぎ、特にビジネス面において停滞期に差し掛かっています。 形状における個性化・差別化も難しく、これ以上の販売台数の著しい伸びは、難しい状況です。
またPC関連ビジネスも同じような停滞状況が、スマートフォンの登場とともに、始まってすでに10年が経とうとしています。
そのような中、世界中のテクノロジー企業たちは新たなビジネスチャンスを求めて、新しいマーケットを作ろうとします。 GoogleGlass(今ちょっと微妙ですが)やAppleWatchなどに代表される、新しい操作方法や体験を提供するガジェットに注目が集まっています。
UX/デザイン対する考え方の進化
また、スマートフォンは操作方法として、物理キーを利用せずに、タッチパネル中心の操作体系となっています。 このことはユーザー体験において大きな変革をもたらしました。 スマートフォンという名前および、各種ガジェットはiPhone以前より存在はしていたのですが、 Appleが設計したiPhoneが爆発的普及にいたったことも、ユーザー体験を重視する考え方、トレンドを加速させる大きな要因になったと思います。
タッチパネルでの操作は、物理キーとは異なり、操作に対する反応を画面上で開発者が表現しなくてはなりません。またその表現の自由度も高く、より体験を重視した操作性に対するニーズと研究が発展がしました。 また利用者自身は意識していなくても、その操作に対するフィードバックが全体の体験として非常に大きなウエイトを占めています。
これらのUX・UIへの注目の高まりと、人間中心設計(HCD)の考え方の発展が組み合わされ、新たな局面を迎えたと考えています。
なぜスマートフォンの登場を待たなければならなかったのか?(ガラケーについて)
一方、日本国内においては、世界に先駆けて“ガラケー”を活用したモバイルインターネットが発展し、一人1台の時代が早い段階でやってきましたが、 生活に密着した各種サービスやQRコード/おサイフケータイ(NFCタグ)/ネイティブアプリなど、他デバイスと連携する機能を持っていたにも関わらず、それだけでは状況としては不十分ででした。
ポケベル文化を下地にして、1999年のi-modeの登場により、モバイルインターネットの発展が、世界に先行して始まっていたのですが、閉鎖的なビジネス環境や独特のPOPカルチャーの中で、ビジネス的な視点と、若年層に消費されるエンターテインメントとしての位置付けから最後まで脱することはできませんでした。
まだ、この時点では、PC向けWEB分野における技術発展が最盛期で、ビジネス的な視点を除いては注目される部分は日本国内においてもほとんど無かったといえると思います。 小規模な企業ではビジネス的な野心を持っている経営者が必要最低限のスキルを持ったエンジニアを利用して、課金ビジネス・広告ビジネスに邁進していた状況で、 ユーザー体験にイノベーションをもたらすようなテクノロジーおよびデザインに精通したエンジニアたちはほとんど興味を示しませんでした。
デザインとテクノロジーの融合、その文脈の中で、今出来ること、
そして、現在、テクノロジー面およびデザイン手法について、状況はそろってきています。 ビジネス面に関してはまだこれからの部分がありますが、大きく変貌する可能性は十分にあります。
メディア理論で有名なマーシャル・マクルーハンの言葉に
メディアはメッセージである
という言葉があります。
この言葉に関しては多くの解説もあり、またこのブログでも改めて書きたいとも思うのですがひとまずWikipediaを引用すると
「メディアはメッセージである」という主張。普通、メディアとは「媒体」を表すが、その時私たちはメディアによる情報伝達の内容に注目する。しかし、彼はメディアそれ自体がある種のメッセージ(情報、命令のような)を既に含んでいると主張した。例えば、同じニュース内容でもメディアが新聞か放送か週刊誌かネットかで受け止め方が違ってくる。 テクノロジーやメディアは人間の身体の「拡張」であるとの主張。自動車や自転車は足の拡張、ラジオは耳の拡張であるというように、あるテクノロジーやメディア(媒体)は身体の特定の部分を「拡張」する。しかし、単純に拡張だけが行われるのではなく、「拡張」された必然的帰結として衰退し「切断」を伴う。
という内容です。
メディア=アート=テクノロジー=メッセージ
そして今、メディア=アート=テクノロジー=メッセージという状況、考え方が成立する時代になってきました。
これを踏まえてIoT/NUIの分野が発展していくことで、本当の意味でのイノベーションが始まります。
そのために
- メディアの歴史を把握し、その文脈を踏まえて考える。
- テクノロジーとUXデザインの発展が新しい人間とコンピューターの関係を再定義できる
- 人文科学とITテクノロジーがデザインという視点・手法で融合する
これを実践することが重要であると考えています。
ということで、これからも書いていこうと思います。
ご意見等ある方は、メッセージいただけると幸いです。